八千草薫さんを哀悼する

女優八千草薫さんが88歳で亡くなった。
私が八千草さんを思う時、やはりS.52年に放映された「岸辺のアルバム」を思い出してしまう。
当時私はその主題曲となったジャニス・イアンに凝っていて、朝から晩までジャニス・イアンを聴いていた。

S.52年といえば大学6年生であり、その翌年に国家試験、そして卒業、就職を控えていた。なぜだか函館で国家試験用の歯を集めていて、ホテルに泊まっていた。
その函館で見ていた回は強烈でかなりショックを受けたのを覚えている。今考えてもいろいろな問題を提起していて、最後はこの間の台風の時のように東京都狛江市の新興住宅が川に流され、さてこれからこの家族はどうなっていくのでしょう、というところでドラマは終わっていた。あまりに強烈な印象を持っているので、最終回だったのかもしれない。
函館は雪が降っていなかったので、おそらく夏休みだろう。東京、札幌、そして函館の先輩や大学の先生の知り合いを30ヶ所位、1軒1軒回って国家試験用の歯牙をもらい歩いていた。
なかには1本も用意していないと、感じ悪く断られたこともあった。
東京のS先生は非常に熱心にこちらの話を聞いてくれて、好感の持てるDr.だった。昭和大に入局した時、かなりの著名な先生であることが分かったが、自分で抜去歯牙を数多くくれたばかりか、自分の札幌の弟子5、6人に紹介状を書いてくださった。
後日学会でお会いした時、その件を覚えていらっしゃった事に感動した。

さて、八千草さんは「岸辺のアルバム」の中で、日本で一番“浮気をしない人”が不倫してしまった事で衝撃をよんだ。
一見この上ない幸せで誰もがうらやむ家庭が、10月の時の台風のように一瞬にして濁流にのまれてしまうという設定のドラマだった。
真面目で実直な真っすぐの“日本の女性”を演じきった立派な日本人の一人と思っています。
ここにご冥福をお祈りします。
残念です。