けんかはやめて食べましょう

従業員が200人ともなると、毎日どこかで従業員同士のもめ事がおきる。
Dr.対衛生士、Dr.同士、衛生士同士、衛生士対助手などなどである。
箱根の事務は苦情処理係化しており、中には泣き出す子もいるので、その対応に一日中おおわらわである。

手広のSさんから電話があり、スタッフ間のちょっとしたもめ事がおきたので仲裁をやって欲しいとの依頼があって、手広医院近くのスパゲッティー屋まで出向く。
当事者の他に3人が出向き、5人での話し合いとなる。
Sさんの、どのように進行したらいいかの問いかけに、
「出だしだけはSさんにやってもらい、後は自分がしゃべるよ」と言うと、「大丈夫かな、もごもご……」と言うので、
「自分が文面を考えてやるから、それをそのまま言うようにしろよ」と言うと「そうします」との事で、いよいよ話し合いが始まった。
着席したらすぐ言えよと十分注意したのに関わらず、何も切り出そうとしない。ふと隣に座っているSさんを見ると『食べている!!』
『わき目もふらずにもくもくとスパゲッティーを平らげている』
その間どんどんと話が違う方向に進み、いい加減切り出せよと隣を見ると『食べている!!』
今度は食べ放題のパンとジュースを飲みながら、もぐもぐとおいしそうに食べている。
そのうち当事者2人が「自分が悪かった、ごめんね」とか言いだして事態はいい方向に好転しはじめ、ふと右隣を見てみると、今度はデザートをほうばっている。
さすがに私も怒りが込み上げて来て「Sさん、何しに来たの。食べに来たのか!仲裁に入ってコメントするはずじゃないのか」と言うと、「もういい方向で解決ですよ」とか言って、耳だけは会話に向けていたらしく笑いながら言う。
「全く仲裁じゃなくて、食事会のつもりかよ」と私が悪態をつくが、
ヘロリヘロリと笑って全く意に介さない。
もっともおいしそうに食べている彼女の顔を見たら、誰しも争う気をなくしてしまうだろう。
うちのスタッフもこういう人間ばかりだったら、もめ事もおきないし、話し合いにはうちみたいな規模でも、トランプでも金正恩でもプーチンでも、にっこり笑っておいしいものでも食べればもめ事はおきないのではないかと今さらながらに思う、うららかな春の1日でした。