笑う門には福来る

箱根医院の受付のKさんはとにかくよく笑う。

1日の大半を笑って過ごしているような感じすらする。

当方が「本当によく笑うなぁ。何がおかしくてそんなに笑うのかよく言われるだろう」と聞くと、「よく言われます」との事。

しかし受付にとってスマイルは絶対の必須要件だと思っている。

歯医者に通うのが楽しみで来る人はほとんどいない。

皆「今日は何をされるのか。痛い事をされやしないか、歯を抜かれるんじゃないか」と沈鬱な気持ちで現れる。

そんな時、らいおん歯科の受付はにっこりとほほ笑むスタッフを配置しているつもりだ。

そのスマイルで、患者さんは救われほっと一息つくのである。

以前通っていた整形外科では、受付が4.5人もいたが、「笑ったら損だ」という顔をしてにこりともせず、そのせいか待合室は凍てついていた。

よく見ると、その中のチーフと思われる女性が一番ひどい状態で、皆それに合わせている様子がうかがわれた。

我が家の近隣の整形外科は、よほど競争が少ないらしく、本棚も1年くらい前の週刊誌が置いてあったり、受付がジーパンをはいていたりして、歯科医の世界ではとっくにやらなくなった事をいつまでもやっている例が多い。

私は受付の面接の時は、1秒で70%は合否を決定する。

つまり、面接する場所に入ってきた時、こちらと目を合わせ、にっこりほほ笑むかどうかだ。

相模原16号医院がオープンした時、受付の面接をしていたら、にこりとも笑わない22~23才の女性が現れた。

履歴書を見てびっくりしたのは、なんとW大の政経学部の出身となっている。

しかし、この人、こちらが冗談を言ってもピクとも笑わない。

そういうわけで面接を終わろうとしたら、さすがW大の政経出身で、「あのー、私今回駄目なんでしょうか」と聞いてきた。

「おそらく」と言ったところ、

「私、何回受けても、どこも採用してくれないのです。私のどこかに欠陥があるのでしょうか?」と聞いてくる。

あまりに素直に聞いてきたので、

「私は笑わない人はとらないんですよ。申し訳ないけれど、あなたはぴくりとも笑わない。歯医者の受付はアイコンタクトをして、ニコッと笑うような人材が欲しいのです。どこでもある程度は同じではないでしょうか」と言ったら、「参考になりました」と言って帰っていった。

今までの歴代の名受付の誰をとってみても、面接の時に皆にっこりと笑って入ってきた。

患者の誰か入ってきた時、最初に目を合わせた時に、にこっと笑う。

それが一番大切だ。

クレームを入れてやろうと思って勇躍やってきても、そのスマイルで腰砕けになる事は間違いない。

しかしながら、人と逢った時にっこり笑うのは、ある程度天性のものがあるようだ。

スタッフの中には表情がとぼしく能面のような顔の者もたまにはいる。

韓国と北朝鮮、イランとサウジ、イスラム国とフランス、ロシアなど、お互いのはらわたが煮えくり返っていても、そこはやはり人間のなせる業で、ニコリと笑い合う事からすべては始まるのではないだろうか。