娘からの手紙

YouTubeのテレビコマーシャルを見て、数年前までの自分と娘の関係もこんな具合だったと思い、このCMを製作したスタッフの能力の高さと演じる俳優2人の演技力に感心している。

娘を演じる広瀬すずは、高校生か大学に入ってすぐ位の設定だろう。

小学校の高学年から大学に入るまでの間、娘と親父との微妙な距離感は、たいがいの“オヤジ”は感じるものだと思う。

まるで“異物”か“エンガチョ”を見るような目で見られている感覚を感じているのは私だけではないと思われる。

オヤジはオヤジで、おさない頃はあんなにかわいかった娘が、こんなにもナマイキになるとは思ってもいないことなのだ。

そんな時当院で、お父さんも歯科医師である女医さんに、その微妙な感覚を聞いてみると、

「自分も社会人となって患者を診療するまではそうだった。先生のところも、お嬢さんが歯科医になったら、こんなに大変な仕事だったんだというようにきっと感じるはずです。それまでは時が過ぎるのを待つしかないですよ」

何気ない一言がずっと耳の奥に残っていた。

あのCMをもう一度見てみると、

「また始まった。お父さんの○○話」

と言いながらも、視線はずっと「オヤジ」に注がれている。

大部分否定しながらも、部分的はオヤジに一目を置き、肯定しているような感じだ。

 

娘が、今年に入って結婚した。

式もクライマックスになって、娘が手紙を私に読むくだりがあった。

その手紙には、

「私も歯科医になって、こんなに大変な職業だということに初めて気がつきました。お父さんが、診療で疲れて帰ってきても、私がじゃれついて、「タカイタカイ」を何回もせがんだ事、その時たぶん父は疲労困憊していて大変だったんだろうという事がやっと今になって解りました。改めて父に感謝したいと思います。」

というような事を読み上げていた。

子が親になり、その子にまた子供ができ、歴史はこのようにして繰り返されていく。

思わずグッときて、泣きそうになったのを必死で抑えた。

 

11月、孫が生まれた。

娘が生まれた時、子供が3人とも高熱が出て、ほとんど一睡もせずフラフラになりながら、最高時1日に170人もの患者をこなしながら、診療をしていた事を思い出した。

きっとこの孫が同じような状態になった時。やっと、私がその時思ったように、親の偉大さとかありがたみを思うだろう。

歳月は流れゆく。

おじが死んだとき、おばが「こればっかりは順番よ。順番が狂うと大変なのよ」と淡々としていた気持ちが解ってきた。

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東京ガス「お父さんの若い頃は」by Youtube