再度歯科医師国家試験を考える

歯科医療の最前線をあずかる者として、国家試験に対して一言申し述べたい。

昨年の第108回国家試験は3138名受験中2003名合格。

実に日本中で1135名の浪人生があふれている。

この間、数軒の歯科医院を経営する友人から電話がかかってきた。

研修医制度とともに国家試験の難化で、勤務医が不足しているとの事だ。

当院でも来年当院で働きたいという受験生を2人あずかっている。

時々2人を刺激する意図で、私が問題を作成して受けさせているが、なかなかいい成績をとっている。

それと、2人のメンタリティーがすばらしい。

去年は1点とか2点の僅差で涙をのんだが、国試さえ受かれば、さぞかし周りから尊敬され、患者から慕われるドクターになると思われる。

先日、日経新聞がなんと一面で、歯科医師が急増したため、わざと治療を長引かせる傾向にあると、一部の歯科医師が行っていることを全体がやっているかの如く載せている記事があったが、更なる国試での定員削減を進めているような内容だった。

これを書いた記者は、どれぐらい国試の問題を難しくさせているか御存知だろうか。

歯医者でも、どのぐらい難化しているか気付いていない者も多いので、無理からぬ事と思われるが……。

国家試験の問題を見てみると、歯科医にとって必要なのかと思われる問題がかなり散見している。

結局落とすための試験で、その根っこは歯科医師過剰問題がからんでいると思われる。

9月22日の日経で国立大学の定員を見て、さらに2割ぐらいは減らせると感じた。

東京医歯大85名、九州歯科大120名はかなり削減できるのではないか。

それと、私立歯科が国家試験の合格率を下げないために、やたらと卒業試験を難化させ、なかなか卒業させなくして、その中には卒業をあきらめてしまう学生も出てきている。

とにかく、入学時こそ若干易化しているが、卒業するのが困難で、その都度授業料がかかり、さらに国家試験が難しく、やっと歯科医になっても開業は1/3が失敗という現状で、保護者がそれに対して、気持ちよくお金を出し、子弟を歯科大に入れるであろうか?

そこで打開策として、

1)65歳以上の歯科医を引退させる(希望者)。
もちろん年齢によって金額は違う。
1人引退させて国試の補欠枠を作って補充する。
例えば、80歳50万から始まって65歳まで増額し(500万くらいか)それを補欠者に番号をつけ順番に支払わせる。
現金のない者は、国が融資をする。
1人退場させ、1人入場させる。
退場させたら、原則として歯科医師免許を取り上げる。

2)国立大学の定員を2割削減。
私立は経営上無理ではないか。
それゆえ、いつまでも削減が進まない。

3)5年以上落ちている者は、技工士に転向させるか、衛生士とDr.の中間の職域を作り、転向させる。
例えば、麻酔の打てる衛生士などetc

4)実地試験の復活。
昔我々の頃はあった。歯科医はある程度の手の器用さは必要と思われる。

5)面接の復活。
昔はあった。明らかに医療職に向いていない人もいる。
(昭和大の面接官によると10人に1人はいるとのこと)

 

未確認だが3回以上国試に落ちると、精神科、心療内科に通院、さらに自殺した者もいるとの事だ。

とにかく歯学部の定員をこういうふうになる事が解っていたにもかかわらず、増加させ続けたのは国の責任であり、それを今の受験生に負わせるのはむごいし、不条理だと思う。

このままでいくと、歯科界に有能な人材が枯渇化することは間違いない。

かなり危機的状況だ。

関係各位のすみやかな対応をお願いしたい。

 

今年の国試の問題

A 第1問目でいきなり英語の問題。この試験は英文科ですか?出題者のいじわるさを感じる。

【必修の基本的事項:一般教養的事項】
1 The goal of  (   ) is to explain the physical and chemical factors that are responsible for the origin, development, and progression of life.
(   )に入るのはどれか。1つ選べ。

a  pedodontics
b  periodontology
c  physiology
d  prosthodontics
e  psychology

 

B 歯医者37年やって、この2人の名前を聞いた事がない。私が勉強不足なのでしょうか。

【歯科医学各論:歯科材料と歯科医療機器】
108  Leavell と Clark による疾病の自然史で第2次予防はどれか。2つ選べ。

a  抜 随
b  レジン修復
c  補綴歯科治療
d  フッ化物歯面塗布
e  ショ糖の摂取制限