8月下旬、めずらしく4連休がとれたので、この際新幹線に乗って函館に行こうと企てた。
天気予報を見ると関東及び東北が台風直撃で、北海道にも上陸となっている。
空模様を見ると、とてもいかにも泣き出しそうで、函館旅行は諦める事とした。
こうなったらDVDでも見るかと、以前より見たかった韓流映画(ミセン)を観る。
これは日本でHopeという番組となって日曜に放映しているものの原作となっている。
韓国の抱える学歴社会の深刻さが浮き彫りにされていて、課長役のイ・ソンミン始め、名優ぞろいで文句なしに感動、3度ほど落涙した。
韓流もので今までの最高の出来と思った。
この国は今不調だが、やがて盛り返してくる予感がした。
そうこうするうちに歯科医師会の友人から電話があり、我が院の草もう期に働いてくれた技工士のS君の妻が急死したとの報があり、42歳だという。ショック…
葬儀に出かける。
とにかく悲惨だ。
大学を卒業したあたりで、同期の妻がくも膜下出血で亡くなった事があったが、その時は本当に言葉で表せない位の状態だった。
おかげで1ヶ月位そのダメージが続いた。
会場に着いて記帳を済ますと、にっこりと微笑んでいる亡くなった奥さんの遺影を見て、美人の誉れが高く本当に光り輝いている様で、とてもじゃないが、憔悴したS君の顔を見るに堪えられなくなり、申し訳ないが式場を後にした。
かなり落ち込む。落ち着いたらS君を飯にでも誘い、慰めてやろうと思いつつ帰宅。
気晴らしにNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」の再放送を見る。ドラマを見ていれば解るが、結婚して妻と死別した初恋の人の葉っぱ先生と再婚となるかどうかが焦点となっていて、葉っぱ先生の子供2人にとと姉ちゃんがなつかれているシーンで、よく見ると女の子の方の“あおばちゃん”が手広のSさんによく似ている。
申し訳ないと思ったが、かなり落ち込んでいるので手広に電話するとSさんが出てくる。
「最近とと姉ちゃん見ているか?」と聞くと、「最近は見ていません」との事。
「葉っぱ先生の子供の青葉ちゃん、君に似ているよね」
「また子供ですか」
「童顔だから仕方ないだろう」
「その子は私の若い頃に確かに似ています」
「やっぱり見ているんじゃないか」
「……」
話題を変えて、「先生、明日からお休み戴いて静岡に行ってきます」
「なんで静岡よ。鰻の蒲焼でも食べに行くのか」
「あたりです」
「こんな暑くても食欲落ちないんだナァ」
「残念ながら」
「かわいそうな奴だ」
「それじゃ、行ってきます」力強く言う。
ほんの5分位の会話でも十分に和む。
最高の抗うつ薬だと思った。
それでは台風明けの明日からはSさんの鰻を頬張る顔を浮かべて頑張るとしよう。