松山千春

大学の最終学年で最後の夏休みに、新千歳空港で機内荷物が運ばれている時、ふと隣を見ると松山千春がいた。
当時は今と違い、髪の毛はふさふさでかなりのイケメンであった。
北海道では彼はすでに大スターであったが、かなり直言居士で毒舌、ズバズバと物を言うタイプで、私としては若干苦手な存在であったので、(ああ、松山がいるな)と思うような感じだった。
ところが次の瞬間から、その印象が一変した。
「千春さーん」と言いながら3人のファンとおぼしき少年が駆け寄ってきた。
その時松山は「オー」と言いながら、10年位付き合いのあるような親しみのある眼差しをその3人の中学生ぐらいの少年に投げかけた。
「迎えに来てくれたのか。うれしいな」
「札幌からか」
その様子と会話から3人の少年は初対面でどこからか松山のスケジュールを割り出して来た様子が窺われた。
「メシ、食いに行くかい」
「車で来たから送ってやるよ」
大きなはっきりした声の北海道弁で少年たちに言っていた。
少年たちは北海道の大スターとのやりとりに上気していて声もうわずっていた。
ファンを大切にして気さくな男。
私の松山に対する印象は180°展開した。
その後松山はヒット曲を次々飛ばし、代議士鈴木宗男の応援に情熱を傾けた。
今までの松山に対する私の評価は、その出来事があってから、義理と人情、友情にこだわる男というふうに変化していった。
今回の、全日空機で1時間遅延した時の彼の行動は久しぶりに“男松山”を感じさせてくれた。
40年前の出来事からの熱烈ファンとしては、彼の行動に喝采を送りたい。