5月のある日

ポールマッカートニーが来日とかで、今度こそ最後だと思って切符を手に入れた。
公演当日、湘南台の医院で午前中治療をして出かけようとすると、手広から電話があり、昨日の公演がウイルス性疾患により、中止になり、今日も中止になる可能性があるとの事。
中止になったら電話で教えてくれと言って、いざ国立競技場へと出発した。
首都高を経て六本木にさしかかったころ、手広から電話があり、公演が中止との事。
「ジェジェジェー」(古いか)
途中、桜ヶ丘医院からもTELがあり、受付が、どこにいるんだと言うから
「ポールマッカートニーの公演に行く」
と言ったら、怪訝そうな声をあげるので、
「ポールマッカートニー、ひょっとして知らないの?」と聞いたら
「知りません」との事。
「ビートルズは?」と聞いたら「それは知っています」との事。
ショック。
「本当にあの子、日本人かよ」
と、ぶつぶつ言いながら、しょうがない帰るか、と思ったが、ふと
いつも一緒に働いている勤務医のI先生の実家の歯科医が、西麻布で開業しているのを思い出し、どんなところでやっているのかと思って、西麻布付近を車でうろうろしていると、電柱のそで出し看板にI歯科とあり、カーナビにセットして、いざ進行と相成った。
カーナビの威力は抜群で、すぐに見つかった。
それよりも何よりもびっくりしたのは、若かりし頃、昭和大在籍中、隣の医局のK先生の憧れのマドンナ衛生士の実家のM歯科が、すぐ近くにある事であった。
K先生が酔っぱらって、M歯科に行くと言って、それを制止するために、追いかけまわしたのを思い出し、「この道はいつか来た道」などと口ずさんでいたら、車をこんこんとノックする音がして、振り返ってみると、これ以上驚くような事はないと言ったような顔をして、I先生が車の中をのぞきこんできた。
「ジェジェジェー」「びっくりしたナァ、もー」
インプラントの講習会の帰りに実家に帰ろうとしていたら、私の車がうろついていれば、そりゃびっくりするよなぁ・・・。
なんとなくバツが悪く、ほうほうの体で、退散と相成りました。
この感覚は何の感覚と思いきや、小学校1年のころ、好きだった女の子のスカートめくりを衝動的にして、その子に
「前からねらっていたのね・・・」と疑われた時の、あの感覚かなぁ。(オマセな子だったなぁ)と思いつつ、帰宅の路につくと、ものの見事にスピード違反で、おまわりさんに捕まり、
「本来なら、ちょうどポールが演奏している時間だなぁ。ポールの馬鹿野郎」とうめいた。
しかし、相も変わらず、進歩のない生き方をして、それこそ
“レット・イット・ビー”だと思った一日でした。