健さん

名優高倉健が逝った。
網走番外地、幸福の黄色いハンカチなど、作品に北海道に関するものが多く、学生時代、札幌でも大人気だった。
大学の近くに安い映画館があり、網走番外地を観に行くと、映画館の前には行列が出来ており、入ってみると通路まで観客が詰まっていて、立ち見をしていて、館内は異常な熱気に包まれていた。
高倉健が忍耐に忍耐を重ね、最期に悪漢をやっつけるシーンでは、あちらこちらから「待ってました」とか「健さん」とかいう声が
かかり、まるで歌舞伎を見ているような状態になっていた。
映画が終わり、寮で同室のI君は、もう身振り手振りが、高倉健が乗り移ったようになり、おもしろおかしく感じたのを憶えている。
幸福の黄色いハンカチも高倉健の、今までの任侠物からのイメージチェンジをした作品だが、泣くまいと思っていたが、思わず涙を流してしまった。
健さんが亡くなって、新聞のマスコミ各社は一斉に特集を組んでいる。そんな中で2年程前に、健さんの親しい友人に宛てた“育ちの善し悪し”についての手紙の中に、
育ちのいい悪いというのは、決してお金のある家に育つか育たないかではなく、自分が与えてもらったことに対して、素直に感謝できるかが、その決め手になる。
音楽でも深く感動する。書物でも胸が高鳴る。
理由は同じである。
人生を発見して、自分が深くなったような気がするからである。
それは錯覚かもしれない。
しかし、自分を深めるのは、学歴でも地位でもない。
どれだけ人生に感動したかである。

全く同感である。
まさしく“感性の人”といえる。
その繊細さ、気高さ、美しさ、謙虚さ、他人に対する思いやり、
そしてプロ根性。
日本の誇りは静かにそのページを閉じた。
日本中の誰もが、その冥福を祈って泣いている。
さらば、健さん。
合掌。