ふるえる君

12月にもなると、さすがに遅くなっていた箱根の紅葉も最盛期となってきたが、その中で常緑樹といわれて紅葉しない一群もある。
思わず箱根のF先生を連想してしまった。

らいおん歯科では、年末にその年にあった事、新入医局員、結婚などを1時間程度のDVDにまとめている。
もうやり始めて5年程経つが、5年前のDVDを見るとさすがに歴史を感じ懐かしさでいっぱいになる。
その中のメインは「恋するフォーチュンクッキー」や「アナと雪の女王」などの曲をメドレーにして皆で踊るもので、10医院と技工+事務がそれぞれのパートを踊り、つないでいくものだ。
また新人のダンスという物があり、藤沢のダンス教室に通わせ、プロにレッスンを受けさせている。
これはとかく各医院で孤立しそうになる新人を集め、お互いに悩みを相談できる場所を作るというメリットもある。

箱根も12月2日にいよいよ撮影となり、レッスンに皆励んでいると、分院長のF先生が、どうしてもワンテンポどころか2テンポ遅れるとチーフのSさんから相談があった。
「F先生は奥様がダンスがうまいので、自分の代わりに奥様が出るわけにはいかないか、と言っています」
「ナニー…」
患者として通って来ていた優しい奥さんの顔が目に浮かんだ。
「じゃ、F先生のお面を被って奥さんに踊ってもらえと言っておけ」
翌日になると、衛生士のSさんが、
「先生、F先生昨日奥さんに話をしたら、『私が得意なのはフラダンスで、こんなのは絶対に嫌と言われ、夫婦喧嘩になった』とふるえながら言っていました。」
「ふるえる君か…」
「ぶるぶる、ふるえちゃう君です」
しょうがない、12月2日に決行だ。
手広のSさんのワンテンポよりすごい2テンポ遅れで撮影決行だ。
翌日、ふるえる君に「どうだ、聞いたか」と聞くと、ふるえながら
「やります」との事。

誠にらいおんグループの分院長はつらいノー。

手広ダンスphoto_s3