立てる ほめる あまえる

日曜の昼過ぎ、のんびりと和田アキ子の番組を見ていると、女医の西川史子が出ていて、先日亡くなった川島なお美について語っていて、生前付き合いがあった時、男に対しては「立てる、ほめる、あまえる」がなければ駄目よと言っていたそうだ。

川島なお美は20代の頃、女子大生DJとして売り出したが、こちらの印象は鼻持ちならない女という感じで、案の定、めっきりと出番がなくなったようだが、その後ヌード写真集を出し、渡辺淳一の「失楽園」で見事復活をとげた。

 

勤務医の頃、市川の開業医に勤めていて売上げをぐんぐんと上げたら、そこの理事長が非常に喜んでくれて、

「市島君、なんでも望みをかなえてあげるよ、何が良い」

というので、遠慮なく「銀座の高級クラブに連れて行ってください」と言ったところ、理事長は政財界の大物が出入りするグレという高級クラブに連れて行ってくれた。

行ったはいいが、さんざん待たされ、中に入って1時間程で、当時の金で19万円とられたのを覚えている。

今から35年程前の話で、やはり当時の歯医者は景気が良かった事と理事長は大物だと思っているが、あまりの高さに仰天したものだ。

その後銀座には懲りて行く事はなかったが、サラリーマンで成功した者のおつきあいで何回か行った。

やはり座っただけで7~8万とられたが、いつも大変なにぎわいぶりだった。何でこんな所に男たちは通い詰めるのか友人に問いかけると、「男はみんなさびしいのさ。

せっかく会社で手柄をたてても、家では女房をはじめとして誰も褒めてくれない。

男はいつまでも子供みたいなところがあるので、褒めてもらいたいんだ。それで銀座に来るんだ」

「銀座の女は日経新聞まで読んで、いろいろ研究しているからな」

なるほど、自分もかなりのせられて、いい気持ちになっていた。

私の相手をしてくれた女の子はやたらと歯科業界に詳しかった。

ついつい「ほめられ、立てられ、あまえられて」のってしまった。

六本木や新宿では「少女時代」から飛び出したようなモデル系の子が多かったが、相変わらず「歯医者って景気いいんでしょ。車何持っているの」式で、銀座とはまるで違った。

いつか四之宮医院で7~8人の女性スタッフと面談をやった時、

(1年に1回は従業員全員と話す機会を設けている)あまりに自分たちの亭主をけちょんけちょんに言うのでびっくりした。

その時全員が「一緒の墓に入りたくない」との事でげんなりした。

そこで私はたびたび言う。

「四之宮などは9時から9時なので、何らかの家族の犠牲の元で成り立っている。

亭主が帰ってきたら、本当にご苦労様でした。あなたのおかげで生活できて感謝しています」と例え口に出さなくてもそう思えと言っている。

銀座のホステスの話をしても、あまりにも住んでいる世界が違いすぎているせいか、ぴんと来ないようだ。

川島なお美は数々の浮名を流し男性経験をつんだ上の発言だと思う。

現に御主人となった鎧塚氏は、群がるマスコミにピザや寿司を配ってマスコミ連中を感激させていた。

お互い立てて、ほめて、あまえあうような理想的な夫婦だったと思う。

9月の初旬、ワインの試飲会に激やせで現れた時、死を予感したが、思いがけず早くきてしまった。

川島なお美の発言は自分の経験から出てきたもので、今日の地位を築くには並々ならぬ努力をしてきたのだろう。思ったよりも真面目でかなりの努力家だったと思われる。

あれほど、20代の頃、高慢ちきで嫌いだったが、彼女は7変化を果たし、最後の言葉となったと言われる「ゴメンネ」には感極まるものがあった。