真木大先輩とマキダイ

この度、開業準備の為5年勤務ののち退職したK君は、自分と中学・高校・大学と全く一緒のコースをたどった。

中学・高校は駒場東邦といい、自分の頃はたいした進学校でもなかったが、K君の頃は様変わりしたようで、時折送ってくる名簿や学内誌を見ると、東大卒業生が多くなり、自分で自分の学校じゃない感じがしていた。

私は野球部に入っていて、毎年夏休みに、長野県の白馬高校のグラウンドを借りて“夏合宿”を行なっていた。

駒東野球部は弱いわりに夏合宿になると、異常に盛り上がり、分不相応の“シゴキ”が行なわれていた。

私は外野を守っていて、エラーをすると、炎天下のグラウンドに正座させられる。

サッカー部も同じグラウンドで練習していたが、あの大きなボールを失くしてもぞろぞろ歩いて帰り、野球部は草むらにボール1つ消えても、懐中電灯を照らして探し続け、往復10kmをランニングして帰った。

1年先輩の人で、突然、正座をしていたら「おかあさん…」と言って立ち上がり、荷物をまとめて家に帰宅してしまったケースがあった程、ある意味きつかった。(見ていて発狂したかと思ってびっくりしたが笑ってしまった)

外野のノックはOBが行ない、結構きついライナー性の当たりをかまされるもので、エラーをしてしばしば炎天下の中、正座させられていた。

そのOBの中心となる人物が真木正喜さんだった。

たしか慶応の経済か何かに行っていて、大学1年の時に現れたので、年齢は19才位だったと思うが、その頃の大学生は大人びていて、とても未成年には見えず、今の30代半ばのような風貌をしていて、オーラで眼がチカチカする程であった。

とにかく、何か言っても、まるで軍隊の上官に対応しているが如く、直立不動で背筋が伸びてしまう程だった。

その後、真木さんは一流企業に就職し、同窓会の会長になった。

その統率力は半端ではなく“さもありなん”という感じであった。

半年に1回ほど、トーホープロムナードという学友誌が駒場東邦から送られてくる。我々のころは、“駒東ファミリー”といって、勉強は大した事がなかったが、卒業後、卒業生同志が助け合い、結束が固い事で有名であった。

さて、真木さんは7期生で、私は12期生という事で、7期生がクラス会をやっている記事があり、それを読んでいると仰天するようなことが載っていた。

それによると同窓会長をやった真木君の御子息はエグザイルの主要メンバーで……と載っていた。

さっそく我が法人を代表するテレビっ子Kさんに、

「エグザイルに真木っていう名前のメンバーいるのか」と問いただしてみると、さすがに即答してきて、

「マキダイのことではないですか?真木大輔が本名のはずです。」

「私も大ファンです。あとAさんとBさんも熱狂的なファンです」

との事。

真木先輩の御子息=マキダイという事が判明した。

顔は全く似てないし、テレビから見受けられる性格も全く違うが、どうやら間違いなさそうだ。エグザイルのメンバーは、誰が誰だか全く解らないが、マキダイは早朝のZIPという番組にコメンテーターとして出ているので知っていた。

とにかく“真木さん”というと、いつの間にか背筋が伸びる条件反射が出来ているので、今度ZIPの中でマキダイを見たら、思わず直立不動をしてしまうのではないかと余計な心配をしている。