娘の結婚式

1月11日、娘が結婚式を挙げた。
2ヶ月程前に、やはり娘さんの結婚式を挙げた同級生から
「市島、バージンロードを歩くのは結構難しいぞ。
ネットでバージンロードを検索すると、歩き方が書いてあるから、
勉強をしておけよ」との事。
「持つべきものは友人」とばかりに、ネットで検索して、練習することと相成った。
式が始まり、牧師の合図とともに、バージンロードを娘を引き連れて歩いた。
「完璧だ」新郎に娘を引き渡した時思った。
控室で新郎が、父親がうまくスピーチできるかどうか心配していた。
『親孝行な奴だ。合格!娘を大事にしてくれよ。頼んだよ』と内心思った。
式は進行し、新郎側の主賓の挨拶が行われた。その時、その主賓が耳を疑うような事を言い始めた。
「えーと、新婦のお父さんですが、バージンロードを歩かれた時、緊張されていた様で、どうもヨタヨタと体が揺れていて、私も娘を持つ身として、こういう西洋式の方はやらない方が良いと思いました………」
一同爆笑をした。
「ナヌー!?ひょっとして俺の事を言っているの……
とんでもない事を言う人だ」
式はつつがなく終わり、久しぶりに娘を除く親子4人で、ホテルのバーに行った。
長男が言った。
「オヤジ、やっぱりやったな…。式の最中にああ言われたのは前代未聞だ。さすがはオヤジと思ったよ」
と身振り手振りで私の様子を真似している。
次男も、全くだと言わんばかりに、うれしそうに笑っている。
黙って聞いていると、さらに
「俺の時は気を付けてくれよ。たっぷり練習してから来てくれ」
私の怒りが爆発した。
「バカヤロー。なんでお前の時に、俺がバージンロードを歩くんだ。
お前は女か。うちは女は一人しかいない。これが最初で最後だ。」
今度からこの愚息はカズシゲと命名してやろうかと思った。
でも、最後の娘からの手紙はぐっとくるものがあった。
バージンロードでよろけ、最後は号泣ではしまらないので、ぐっとこらえた。
夜になり、一人になって、再度娘からの手紙を読むと、よくここまで成長してくれたという思いと、寂しさが交代交代にやってきて、何とも複雑な心境になっていった。
自分の子供の結婚式は、普通の場合の3倍、自分がやる場合の2倍、疲労感があると、つくづく思いながら眠りについた。

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