デブ同盟

何やらテレビを見ていると、松村邦洋がRIZAPの宣伝に出てきて、30kg痩せたと言ってはしゃいでいる。
こちらから言わせてもらうと、ビートたけしも言っていたが、全く松村らしくなく、しなびたナスみたいになってこれからさぞかし仕事が減るだろうと思っている。

20年程前、久しぶりに横浜の中華街に行ってひとりランチを楽しんで、いざ帰ろうとして外に出ると、芸能記者とカメラマンが待ち構えていて私の事をパシャパシャと写真を撮った。
Focus やFridayに出る程有名ではないので、何事かと思っていると、「松村さんですよね」と言って近づいてきて、私がびっくりして
「違うよ」と言うと、何だという顔をして去って行った。
「松村?」大学の同級生にも従業員にもそんな名前があり、ありふれた名前だが、芸能記者っぽいので近づいて行って、
「ひょっとして松村邦洋と間違えたんじゃないだろうな」と詰め寄ると、「すみません。体型が似ていたもんで」と言う。
「ふざけんなよ!!」
松村といえば、女性誌で「抱かれたくない男No.1」に選ばれていた。
もっと詰め寄ろうと思ったが、向こうも這う這うの体で逃げ去ったので諦めた。
家に帰って怒りが収まらない私は、よせばいいのに大学の同期の悪友のTに電話をして事の顛末の話をすると、Tは笑いながら、
「そんなこと言ったら、松村がかわいそうだ」と言い放ち、
「市島、俺最近サザンの桑田に似ていると言ってモテてるのよ」とか言うので「どうせ、宇都宮の場末のキャバレーの姉ちゃんだろ」と毒づいた。

大学の寮の後輩でも私の30%増しのデブがいて、その行動には注視していて、何とか痩せないようにマインドコントロールをさせている。
写真を撮る時には、さりげなく隣に立つか座るかして、自分のデブが目立たないようにしている。
そのKがこの間会った時、不吉な事を言っていた。
「市島さん、僕も退職を機会にライザップに通って痩せようと思っているんだけれど」との事で、私は
「やめろやめろ、金とられるだけだぞ。それに皆リバウンドしている」とひやりとしながら説得した。

秦野医院のUドクターは、3回目のライザップで見事に痩せ、デブ同盟を離脱した。
そしてまた手広のSさんもヨガを始め、「太っている方がかわいいよ」との説得をよそに離脱しようとしている。
続々と続く離脱に、私も何とか離脱を試みるが、小田原に出来たライザップの場所がイマイチ解りにくいのをいいことに、躊躇している。
自分以外の人間のデブ同盟の離脱を阻止して、なおかつ自分だけ離脱しようとする私はつくづく卑怯な男だと思っている食欲の秋のお話でした。