にくらしい程強いやつ

~北の湖理事長の死去を悼む~

 

大相撲の北の湖理事長が亡くなった。

彼と私は2ヶ月違いの昭和28年生まれで「ハナのニッパチ」とも言われた世代だ。

北大に在学中、NHKの大相撲中継を北海道出身の同級生と見ている時があったが、全く北の湖を応援しようとしないので、

「郷里の力士をなぜ応援しないのか?」と聞くと

「北海道は相撲取りは大鵬なんだ。大鵬に始まり大鵬に終わる」

と彼は言い放った。

なるほど「巨人・大鵬・卵焼き」と言われる程、大鵬は強く美男で「絵になる横綱」だった。

一方、北の湖は「江川・ピーマン・北の湖」と言われ、独特の悪漢面から人気がなく、いつも貴ノ花や千代の富士のいわゆる「敵役」としての存在となっていた。

大学を卒業して昭和大に就職した時、当時は助教授だったH先生と昼食をとっていると、北の湖の話が出て、北の湖の事をべた褒めしている。聞くと、北の湖の奥さんの実家と助教授の家は隣家で、たびたび北の湖と会っているような話だった。

「とにかく、彼は人が良い。ああ見えて、なかなか繊細で人に気を遣ういい男だ…」とか「財布を彼が落として、若い衆がそれを拾ったら百万円入っていて、それを横綱に届けたら、『みんなで使っていいよ』と言った」とか、毎回絶賛するので、知らず知らずのうちに単純な私は北の湖のファンとなっていった。

引退後、人格者「北の湖」を角界は放っておくわけもなく、長く理事長としての職責を果たした。

その間いろいろな諸問題がわき起こり、大相撲は斜陽化し、最近やっと女性ファンが増加して、いい時代を迎えたばかりの彼の死であった。

同世代として早すぎる死を惜しみたいが、やりたい事をやりつくした感もあり「本当に長い間ご苦労様でした」という思いである。