そだねー

ピョンチャン五輪が終わった。
なかでも終盤に銅メダルが確定した女子カーリングは見ていて涙が止まらなかった。

北大歯学部に在籍中、出席番号の1番が私で、2番がOさんであった。実験でも実習でも彼女と組んでやらされる事が多かった。
彼女は非常に真面目な人間でいつも一番前の席で授業を聞き、彼女のノートは「Oノート」といい、クラスの大半は彼女のノートをあてにして進級試験に臨んだほどであった。
私はOさんが出席しているのを確認して一番後ろの席に行って惰眠をむさぼっていた。
歯学部はやたら実験実習が多く、Oさんと共同でやっているので何かお礼をと言うと、「なんも、なんも」とか「なんもだ」そして
「こういう風にやったらどうだろう」と言うと彼女独特のかん高い声で「そだねー」が返ってきた。
北海道は広く、最初方言なら皆同じかと思っていたが何故か彼女だけが「そだねー」を使っていて、他の北海道出身の女子は使っていなかったように思う。
「そだねー」が皆から注目を浴びるようになって、真っ先に彼女の事を思い出した。旅行先で知り合ったお医者さんと結婚して1児をもうけ幸せな家庭生活を旭川で送っていたが、10年前にこつ然と世を去ってしまった。最後の年賀状がやけに丁寧で、私が学生時代親切で(全く自覚はなかった)ありがたかった事を長々と述べてあり、いつもと違うなと思って不思議な感じがしたが、それからしばらくして亡くなったという報を受け、あれはお別れの手紙だったんだと解釈した。

テレビで「そだねー」が話題になっていると聞き、その直後に彼女の事をいろいろと思い浮かべたら涙が止まらなくなってしまった。Oさんが生きていて「カーリング、銅メダルよかったね。北海道の誇りだね」と言ったら、きっと彼女独特の柔和な顔をして「そだね…」と返ってきたような気がする。