心配する人、しない人。

女優樹木希林があっけなく、淡々と世を去った。
5・6年前、全身癌である事を告白する時も、まるで人ごとのようにあっさりとコメントしていた。やはりただ者ではないと思った。

山北に行くと、いつもは朝から絶好調のAさんの元気がない。
「どうした?元気ないねー。」と言うと、待ってましたとばかり、2週間前から口の周りがピリピリと痺れるとの事で、「脳腫瘍じゃないかと思って。」とか、「どうせ私なんか死んでも悲しんでくれる人がいない。」とか、かなり落ち込んでいる。「チック症じゃないの。」と言って、脳外科の受診を勧めた。
脳外科の受診で、脳は大変綺麗だと言われたとかで、先日とは打って変わって元気になり、「ストレスが原因の、やはりチック症だったようです。」と言い、ストレスはお前(私)が原因だろうという顔をして、今は遅い夏休みを東北旅行でとり、旅立って行った。

今年は忘年会はやらず、クリスマスで洒落た外れなしのくじ引きをしようと、古株の手広のSさんに電話をすると思った通りに「サーティーワンのアイスクリーム券にして下さい。」と言って来た。
「でも、この間胃カメラ(当院では年に一回定期検診で行なっている)で引っかかったからなぁ、ブツブツ。」と言い、「何かの切片を取るとか言って、5,000円取られたけど何ですかね?」と言うので、「それは悪性腫瘍を疑っているのではないか。今頃顕微鏡で見てるぞ。」と言うと、「アジャジャ・・・。」と呟くように言ったが、どうもあまり気にしている様子はない。
そうは言っても言い過ぎかと思い、翌日もう一度様子をうかがうと、やはりあまり気にしているふうではなく、「2週間後に、結果が出ると言ってたけれど、行った方がいいですかね?」とまるで他人事のように言う。
これが前述のAさんであればノイローゼ状態であったと思うが、人によってこうも反応が違うのかと思った。

樹木希林は、もちろんSさんのタイプで、どちらの方が人生を有意義に充実した思いで過ごせるのか。
恐らくAさんとSさんの中間だろうと思われる私は、しばし考えさせられてしまった。

樹木希林さんの御冥福をお祈りします。ロックンロール!!