からかわれやすい人

湘南台の医院に行ってみると、箱根から転勤した衛生士のFさんが、人懐っこい笑顔を浮かべて近づいてきた。
私はなぜだか、Fさんを見ると途端にサビのきいたジョークを言いたくなってしまう。
Fさんは27才、妙齢である。
傷つきやすい、うら若き乙女であることは、充分に熟知していながら、私は条件反射的にFさんへ”カラカイ”の言葉をあびせてしまっている。
「Fさん、今年はFさんが箱根からいなくなったら、おサルさんが急に現れなくなったよ。なんでだろうね。」
さっきまで、満面の笑みで笑っていたFさんの顔が急にこわばり、顔では少し笑っているが、目が非常に険しくなっているのが見て取れた。
「しまった。またやった。」と思いつつ、もう制御がきかない。
「きっとお仲間がいなくなって、山へ戻ったんだと思うよ」と
連続のパンチを放つ。
ついにFさんは泣きそうな顔をして、そばにいたチーフのHさんに訴えかける。
「理事長ったら、その類の話をブログに書きまくっています。ひどいんです。」
こういうのはセクハラに入ると思いつつ、
「あのFさんは、あなたと違う人よ」と言うと、毅然とした声で、
「箱根にはFという衛生士は私しかいません!!」
と言い放ち、顔がだんだん真剣になってくる。
「やっぱり、やめておけばよかった」
と、自分の愚劣さと稚拙さを反省する。
それにしても、なんでこう、からかいたくなる人間と、からかいたくない人間がいるのだろうか。

自分は昔から小中高を通して、断固として、からかわれやすい人間であった。
同じことをやっていても、何で自分だけからかいの言葉をあびせられたり、からまれたりするものか不思議であった。
一回、自分で歩いているところのビデオを見たことがあるが、自分で見ても、何故か特徴的でユーモラスなのであった。
からかいたくなる人間とは、すなわち日頃から動作がおもしろく、からかう人間がおもしろいと常々思っているからではないだろうか。

昭和大に就職して、実習のインストラクターになった時、からかいやすい学生とからかいたくない学生がいるのに気が付いた。
からかいたくなる学生とは
①冗談が通じ、日頃の言動、行動がユーモラスで、かつ
②自分が好ましく思っている人間で、からかいたくない学生はその逆だということだ。

そんなわけで、Fさん、なるべくもうからかうのをやめるから、
嫌いならからかわれない、という事で、阿呆な私を許して下さい。
と言いつつも、今度はどんなきついジョークをあびせるか、考えている私でした。