君はエディ・タウンゼントを知っているか

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ここに一枚の写真がある。片目をつぶった老人が左の親指と人差し指の中を凝視している。
実はこれは私の大好きな写真の一つだ。
この老人の名は、エディ・タウンゼント。
6人もの世界チャンピオンを育てたボクシングの名トレーナーだ。
このポーズは、エディのよくとるしぐさで、世界チャンピオンになる選手と、ならない選手の違いは「ほんのこれだけ、これだけだよ」
と、指と指の間を数センチあけるポーズをして、無名のボクサーたちを励ましたそうである。
どのような世界でも、歯医者の世界でも、似たり寄ったりである。
地域一番の誰からも尊敬されるドクターになるか、ごくごく平凡なドクターになるかを、毎日毎日のほんの少しの努力の差の蓄積からくるものだと思っている。
60才以上の方は、藤猛という名のボクサーを記憶されている方も多いと思う。ハワイ出身の日系3世で、破壊的なパンチをもって、チャンピオンに昇りつめた選手だ。
藤猛の試合で初めて、エディ・タウンゼントをTVで見た。
イブシ銀のような男だ。子供心にそう思って、藤猛よりむしろかっこいいと思った。
エディはその後も、柴田国明、ガッツ石松や井岡弘樹などを育て、名トレーナーとしてのぼりつめた。
井岡の世界戦の時、直腸癌で入院していた病院から這い出して、最後の力を振りしぼって観戦しようとして力尽き、病院に戻り、最期に井岡の勝利を知って、ガッツポーズをしながら、天国に召された話は有名である。
あるTV番組で、過去にエディが育て上げた弟子たち数人に、
「エディに最も愛されたボクサーは誰か」と質問したところ、皆迷うことなく、自分が最も愛されたボクサーだと答えたというエピソードがある。
もう一度人生をやり直せるなら、何になりたいと言われたら、間違いなく、ボクシングジムの会長かトレーナーになりたいと答えるだろう。
あしたのジョーを育てた丹下段平や、エディ・タウンゼントのようになるのが、私の夢である。
60を過ぎ、果たして何人のドクターが自分が一番愛されたと言ってくれるか、私の闘いは始まっている。