人生いろいろ

「馬鹿だねー。人が好いものだから、苦労ばっかり背負いこんで、私よりもっとお人好しだね」
島倉千代子の、何億もの借金を背負いこんだ話をTVで見るにつけ、生前の母がそうつぶやいていた。
島倉千代子は、幸せな結婚もつかの間、離婚、そして多額の借金を背負いこみ、それを返済すると同時ぐらいに今度は病魔に襲われる。
そして実姉の死。
母は自分の人生になぞられて、スケールが小さいものの自分と似ているものと思ったのかもしれない。

母の死後、遺品を整理していると、結構な数の借金の証文が出てきた。私の知る人もいれば、知らない人もいた。
人に金を借りたいような貧乏な家なのに、何故に人に金を貸してしまうのか。
「だますより、だまされる方がうんとまし」
とか何とか言って、返してくれるあてのない、なけなしのお金を貸していた母の事を思うと泣けてきた。
「人生いろいろ」と歌っている島倉千代子を見ると、
母とだぶってしまう。
日本の女、お人好し、あわれな女、哀愁、可憐、そしてかわいらしさ。
歌に生き、三日前もレコーディングをしたという執念、島倉千代子も死ぬ間際まで、きっと幸福だったに違いない。
「だますより、だまされた方がましよ」と思って。