三たび歯科医師国家試験を考える

3月17日 第110回の歯科医師国家試験の合否が発表になった。

我が法人でアルバイトを長い事していたT大のA君は、残念ながら今年も合格とはならなかった。

昨年は1点差で涙をのんで、今年は皆で期待していただけに、さぞかし御両親は落胆された事と思われる。

全体の合格率は65%で、3049名受験で1983名合格であるが、問題は受験票を出した人数が3691名で、実際受験した人数は3049人のこの差約600人である。

この600人は大学側で国試の合格可能性が低いと判定して、自主的に受けさせなかった人数と推測され、要するに実際の国試浪人は1600~1700人いると思われる。

つまり、今の日本に身分不確定な人間が1600人以上もいるのが現状だ。

私の後輩で、国試予備校を経営している者がいるが、国試浪人は何らかの形でメンタルに障害があり、精神科及び心療内科に通院する者が多いとの事だ。

歯科医師国家試験は資格試験のはずではないのか。

いつの間に選抜試験となってしまったのか。

そして、合格率91.5%の医師国家試験との差は何なのだろうか。

厚労省ははっきりと言わないが、要するに歯科医師過剰対策と考えられる。

私が大学に入学したころ、将来は歯科医師が過剰になるという話を学部長がしていて、その時はピンとこなかったが、しかしながら、その後も国立歯科大は定員を増やし続け、その愚行のつけが現在の受験生に影響していると思われる。

官僚の失敗を現在の受験生に負わせるのは酷な話ではないか。

そして歯科医師過剰と言われているが、一方において、私の友人の大手医療法人の経営者は、皆「ドクターが足りない」と言っているし、訪問診療の部門は超高齢化社会がそこまで来ているので、ドクターが必要と思われる。

前々から言っているように、この彷徨っている1500人とも2000人とも言われる国試難民をどうするかは、私の主任教授であるW先生も国試担当になったこともあり、大変心配されていた。

歯科大卒業生は、現在歯科技工士の受験資格はあるが、衛生士の資格はない。

歯科医師と衛生士の資格の中間のものを創設し、麻酔を打たせるとか義歯を作るなどの権限を与えるべきと思われる。

アメリカでは歯科助手や衛生士も、州によっては試験をして合格すればステップアップさせている。

その中間の資格者を3年たったら再受験させ、やや易化した試験で、歯科医師にさせたらどうだろうか。

現場を預かる者として、歯科医師の適正は小難しい問題を解く能力ではなく、医療人として皆から尊敬されるメンタリティー、そして体力、気力が重要であると思っている。

それと、そんなに歯科医師過剰を心配してくれているのなら、団塊の世代がもう70に到達しかかるようになっている今となっては、彼等に、80歳くらいなら50万、75歳なら250万と、段階的に退職金を国家が渡して、もうやめたくてもふんぎりがつかない老歯科医師を退場させれば良いと思う。

それを受験生は奨学金代わりに払い、国がお金を貸し出すようにして国家試験の合格点に近い順番で、合格させれば良いのではないか。

いずれにしろ、歯学部を出ても歯科医師にならなければ「歯の事に少し詳しいおじさん、おばさん」にすぎず、今ひそかにささやかれているように自殺者が年々増えていくと思われる。

何らかの手を打たなければ大変な事が起こり得ると、私は予言したいし、早急に国は対策を取るべきものと考える。